愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題!
その18.≪これがあの精霊流し?!ウソ〜ッ!≫
今日、8月15日は、終戦記念日であるとともに、旧盆の最終日でも
あります。全国各地で先祖の霊を送る行事が、粛々と執り行なわれて
います。長崎でも、さだまさしの唄で有名な「精霊(しょうろう)流
し」が行われ、場所によっては交通規制も実施されて、市を揚げての
一大イベントが、まさに繰り広げられようとしています。そして、こ
の「精霊流し」を目当てに、長崎観光を楽しもうと言う観光客の数も
多く、市全体としても正に稼ぎ時なのですが・・・後から観光客に訊
いてみると、どうもあまり評判がよくないんです。 。
ご存知の通り、さだまさしの「精霊流し」は、詞も曲も大変に叙情的
で、しんみりと心に染み入るような名曲なので、観光客も当然の事な
がら、その唄のイメージを心に描いて、ロマンと異国情緒溢れる長崎
の夜の雰囲気を満喫しようと、楽しみにして来られるのですが、実際
には、耳をツンザクような爆竹の音と、まともに目を開ける事も息を
する事も出来ないほどの、おびただしい花火の煙に、唖然として帰っ
て行かれます。本当に、「精霊流し」を間近で見物しようと思えば、
耳栓とマスクは必需品ですし、遠慮会釈なく飛び散る爆竹で、火傷を
したり服を焦がしたりする事も、覚悟しなければなりません。 。
古くから各地で行われている、「火祭り」や「喧嘩祭り」の見物のよ
うに、最初からその勇壮さを楽しむ目的での観光なら、誰も文句は言
わないでしょうが、さだまさしの唄のイメージが余りにも強すぎるの
で、現実とのギャップにガッカリして帰られる観光客が多いんです。
僕も何度かお客様を案内した事がありますが、殆んどの方達が呆れて
帰って行かれました。僕自身、あの喧騒の中に参加するのはマッピラ
なので、いつも自宅でテレビ中継を観る事にしています。 。
それでは、さだまさしの唄のイメージは、偽りのイメージなのでしょ
うか?!もしそうなら、何百年も前から現在のような騒々しいやり方
だったのなら、さだまさしもあんな曲は作らなかったでしょうし、僕
も殊更異議を唱える事はしないと思います。僕が子供の頃の「精霊流
し」は、もっと静でしめやかでした。銅鑼を打ち鳴らしながら「ドー
イドイ」と言う掛け声を掛けるものの、決してうるさいと感じる事は
ありませんでしたし、花火も時々「シュルシュルッ」と上がる位で、
たまに誰かがふざけて火をつけた「ネズミ花火」が、「パーン」と足
元で弾けて驚く程度でした。 。
それが今では、一晩で燃え尽くされる花火と爆竹の総額が、数億円と
言われています。そしてこれこそ見事なのですが、市全体を埋め尽く
した花火の灰と燃えカスを、清掃局総出で、朝までにアッと驚くほど
綺麗に片付けてしまいます。まさに壮大な浪費としか言い様がありま
せん。それでも、殆んどの市民や観光客が心から楽しんでくれるのな
ら、決して無駄とは言えませんが、どうやら楽しんでいるのは、精霊
船を曳いている男衆だけのように見受けられます(昔は担いでたんで
すが、今は色々な事情で、ある程度の大きさ以上の物は、車を付けて
曳く事になっています)。 。
僕は決して、楽しむなと言うつもりはありませんし、アレだけの花火
を全部禁止すれば、花火産業にとって大きな痛手になる事も理解して
います。ただ、長崎の人はどうも、自分達の楽しみを最優先にして、
自分達が楽しければ見物衆も観光客も楽しいに違いないと、信じ切っ
ているように思えるんです。これは、モウ1つの大イベントである、
「お宮日(くんち)」にも言える事です。でも今後の長崎は、当面観
光でしか生きていけない町なのですから、自分達が楽しむ事より、ど
うしたら観光客に楽しんで貰えるか、観光客が何をどのように楽しみ
たくて長崎に来てくれるのかを、もっと真剣に考えて、変えるべきと
ころは変えていくようにしなければ、リピーターが更に友人を連れて
来てくれるようにはならないと思います。 。
先ごろ上映され、主演の吉永小百合さんが最優秀主演女優賞を受賞さ
れた映画、「長崎ぶらぶら節」のワンシーンに、昔の「精霊流し」の
情景が再現されていて、それは丁度、僕が子供の頃に体験した、しめ
やかで情趣溢れる光景でした。極め付けは、眼鏡橋の下の中島川を、
無数の小さな精霊船が流れていくシーンでした。これは僕も見た事が
ありませんでした。恐らく、大正から昭和の初期までは、あのように
して流したのでしょう。それはそれは美しい光景にウットリしながら
も、僕は「これは大変な事になったゾ!」と慄然としました。だって
考えてもみて下さい。この映画をご覧になった全国の方々が、その美
しい光景に憧れて、「精霊流し」見物に長崎を訪れたとしたら・・・
恐ろしい結果が待ち受けていると思いませんか?! 。